FBAで在庫が長く残り、毎月の長期保管料に頭を悩ませていませんか。回転が遅いと資金が固まり、新しい仕入れや販促に回せなくなりがちです。この記事では、在庫の見極め方や出品・価格調整、返送や処分の判断基準、販促での回転率改善まで、初心者でも実践しやすい対策を解説します。無駄な保管料を減らし、在庫をスムーズに回すコツをつかんで、FBA運営を効率化していきましょう。

数字で見える化し、問題を突き止める

「どの在庫が、どれだけ重たいか」を見える形に整えることが解決の出発点です。数字で把握できれば、打ち手の優先順位が自然と決まります。まずはSKU単位での把握を徹底し、在庫年齢や売れ行きの偏りを定点観測しましょう。

SKU単位で必須KPIを押さえる

まずはSKUごとに最低限見るべき数字を定めましょう。基本的なKPIは以下の通りです。

在庫日数（DOI）：在庫÷1日平均売上。何日分の在庫があるかを示します。
在庫回転率：期間売上高÷平均在庫金額。年間で何回在庫が入れ替わるか。
Sell-through率：販売数÷(期初在庫+入荷数)。仕入れた商品の何%が売れたか。
在庫年齢：在庫がFBA倉庫に保管されている期間の分布。

DOI・回転率・Sell-throughは特に優先して確認します。

収益性KPI（概算）
利益 = 売上 – 原価 – FBA手数料 – 収納保管手数料 – 低在庫レベル手数料
– 過剰在庫追加手数料 – 返送/廃棄コスト – 配送費

重要なのは、新たな手数料まで含めた総合コストで判断することです。従来の長期保管料だけでなく、低在庫レベル手数料やFBA在庫保管追加手数料の影響も加味し、返送・廃棄の閾値を厳しめに設定します。

データの切り口と収集項目を定める

数字を集める前に「どんな観点で比較するか」を決めましょう。期間（直近7日・30日・90日や季節性確認）、サイズや重量（保管・出荷コストに影響）、価格帯（特に安価帯の回転差）、バリエーション（色・サイズの分散）、プロモーションの有無（広告やクーポンの効果）といった切り口が有効です。収集すべき基本項目は、日別/累計販売数、現在庫と納品予定、価格履歴、競合出品数、返品率と理由、レビューの推移、販売不可在庫の有無、広告指標など。最初は販売数・在庫数・価格・在庫年齢の4軸に絞り、徐々にKPIを拡張します。

在庫問題ダッシュボードの出力物を決める

1. 危険度順SKUリスト（緊急・要注意・様子見の3段階）
2. SKUごとの推奨アクション
3. 見切り価格と数量の目安
4. 在庫年齢の分布グラフ
5. 保管料予測（現状維持の場合）

表示上は、色分け（赤・黄・緑）、販売推移のスパークライン、期間や価格帯・カテゴリーでのフィルタなどを設け、ひと目で判断できる設計にしましょう。まずは表計算ソフトで作り、必要に応じて自動化を検討します。ダッシュボードは週次更新を基本とします。

根本原因を解明

在庫滞留には、様々な要因が複雑に絡み合っています。原因を明確にすることで、的確な対策を講じることができます。症状→原因→対策の一本線を意識して整理しましょう。

データとプロセス面の問題点を洗い出す

在庫管理に関わるデータやプロセスに不整合がないか点検します。販売予測と実績の乖離、在庫数の不一致、発注から納品までのリードタイム長期化、在庫状況や販売計画の情報共有不足、受発注システムとAmazonの連携エラーなどが代表例です。セール期はリードタイム変動や配送遅延リスクが高まるため、通常より安全在庫を高めに設定し、複数倉庫・複数納入パターンを検討してください。プロセス遅延は連鎖的に滞留を悪化させます。

商品とポートフォリオに関する要因を整理する

商品特性やポートフォリオ構成の歪みも滞留の原因になります。季節性商品の比率が高いとオフシーズンに滞留が増えますし、新製品導入と旧製品処分のバランス、競合との価格差や需要とのミスマッチ、色・サイズなどのバリエーション過多も影響します。季節商品は早めの処分判断、定番商品は安定補充のルール化が有効です。商品特性に合わせた在庫戦略を徹底しましょう。

組織と運用ルールのズレを確認する

KPI設定のミスマッチ（売上重視で在庫効率を軽視）、発注点や補充量のルール不在、在庫削減の主体者や責任の不明確さ、在庫効率を評価するインセンティブ不在などを点検します。自動化は、データ整備（SKU単位の売上・在庫・在庫年齢）→簡易ルールの自動化（発注アラート等）→高度な発注最適化ツールの順で段階導入が安全です。KPI整備を自動化前提で進めると定着が早まります。

即効性のある短期施策

現状分析ができたら、すぐに着手できる施策から始めましょう。優先順位付け→売り切り→仕組みの目詰まり解消の順で動くと効果が出やすいです。

SKUの優先順位付けと見切り基準

全ての滞留在庫に同時対応するのは非効率です。以下を優先基準にして取り組みましょう。

1. 在庫金額（原価）の大きさ
2. 在庫年齢（長期滞留ほど優先）
3. 保管料の負担（サイズ・重量の影響）
4. 季節性（次シーズンまで持ち越せるか）

見切り判断の数値例は、在庫回転率が1.0未満（年間で1回転しない）、在庫日数が180日以上、長期保管料まで含めて赤字になる商品などです。

長期保管料だけでなく、低在庫レベル手数料や過剰在庫追加手数料も含めた総合コストで損益を判定し、返送・廃棄の閾値を明確化しましょう。数値基準での即断即決が鍵です。

具体的な売り切りと回収の実行アクション

価格戦略は、段階的値下げ（10%→30%→50%）や、期間限定のタイムセールを組み合わせ、最低でも原価回収を狙います。販促施策では、人気商品とのバンドル、クーポンの付与、広告強化で露出を増やして認知を高めます。返送・廃棄は、長期滞留で販売見込みが低い、値下げしても動かない、保管コストが見込み利益を上回る、といった条件で早めに判断します。返送・廃棄の判断は感覚ではなくデータで行いましょう。

発注点と安全在庫の即効見直し

新たな滞留を作らないために、最小発注量の見直しやリードタイム短縮、小ロット高頻度への切替を検討します。安全在庫はカテゴリ別のばらつきや季節変動を織り込み、欠品リスクと在庫リスクのバランスを取って再計算します。仕入先とは柔軟な発注条件や返品可能性を事前に協議し、サプライチェーン全体での合意形成を図りましょう。安全在庫と発注点の見直しが再発防止の土台です。

まとめ

FBAでの在庫滞留は、まず数字を可視化し、SKUごとのKPIで症状を把握することが第一歩です。無駄な長期保管料を減らし、資金を新しい仕入れや販促に回せるよう、一つずつ着手してみてください。課題の可視化から始め、データで原因を突き止め、優先順位を付けて短期施策で回転を改善。返送・処分の判断基準と発注見直しもセットで整えれば、長期的に負担を減らせます。まず一SKUから手を付けて変化を実感しましょう。

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