Amazon FBAで販売を始めたけれど、「在庫がなかなか動かない」「保管料や資金の回転が心配」「逆に売り切れて機会を逃してしまう」と困っていませんか。
在庫回転率は、売上だけでなく日々の資金繰りにも大きく影響しますが、原因は発注のタイミング、価格設定、出品情報、プロモーションなどいくつかのポイントが絡み合っています。
この記事では、初心者でも無理なく取り組める実務的なステップをやさしく丁寧に解説します。まずは基本のチェック項目から、すぐに効果が出やすい改善案までを順を追って学び、在庫をスムーズに回すコツを身につけましょう。
状況を見える化するチェックリスト

まずは「今どこでつまずいているのか」を短時間でつかみます。実務では基本情報と簡単な計算から着手するのが近道です。数字をざっくりでも把握しておくと、判断のズレが起きにくくなります。最初の一歩は“状況を見える化すること”です。
保管手数料と在庫日数の増加を確認する
保管料の影響を早めに把握することが最重要です。重さやサイズが大きい商品ほど保管コストの影響が強く、利益を静かに圧迫します。料金シミュレーターで概算し、売価や粗利とのバランスを定期的に見直しましょう。とくに在庫の滞留が長いSKUは、保管料と販売計画の両面から早めに対策します。
| 確認すべき項目 | 確認方法 | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 保管料の影響 | 料金シミュレーターで概算し、売価や粗利とのバランスを確認 | 商品の粗利に対して保管料が10%以上なら要注意 |
| 長期在庫手数料 | 公式の最新情報を定期的にチェック | 在庫年齢が181日以上は手数料アップの可能性 |
| 在庫日数 | 現在庫 ÷ 直近の1日平均販売数 | SKUごとに適正在庫日数を設定(一般的に30~60日) |
たとえば在庫100個、30日で60個売れたなら1日平均は2個なので約50日分の在庫です。これは「まだ余力がある」という判断だけでなく、在庫日数が目標値を超えていないかの指標にもなります。在庫日数が長いSKUは価格や露出の調整、在庫の返送検討まで含めて優先マークを付けましょう。
欠品と倉庫在庫のズレを洗い出す
Amazon Seller Centralの「在庫健全性」と「フルフィルメント在庫」を日常的に確認し、現在庫・予約中・入荷中の数値が噛み合っているかを点検します。売れているのに在庫表示がない、受領が止まっている、予約が多いのに補充が遅いといった症状は、いずれも機会損失のサインです。「納品」タブの受領状況やラベル不備のアラートは先回りで潰すことで、販売機会の落ち込みを防げます。
とくに繁忙期は、FBA倉庫での受領リードタイムが長くなることがあります。受領中に在庫切れが見えたら、追加納品で分散したり、価格・広告を一時的に調整して販売ペースをならすのも有効です。
手作業の工数やデータ更新の遅れを把握する
管理の要は、指標の一元化です。最小限でも「販売数・在庫数・価格・在庫年齢」をひとつのシートにまとめて、更新漏れをゼロに近づける仕組みを作りましょう。データ反映の時差があるため、重要SKUは目視確認も併用します。A級SKU(よく売れる)は毎日、B級は週1、C級は月1のように、見る頻度を分けるだけでも効果が出ます。
在庫が回らない原因を絞り込む

原因は大きく「時間」「優先順位」「運用ミス」の3軸で切り分けると整理しやすくなります。どの軸に問題があるのかを先に特定できれば、対策は半分終わったようなものです。
発注タイミングとリードタイムの見落としを探る
リードタイムとは、仕入先の準備から配送、FBA受領、販売可能になるまでの合計時間のことです。ここを短く見積もると欠品リスクが跳ね上がります。季節商品や広告で押すSKUは、平均だけでなく“遅れた時の最大値”も記録しておき、安全側で計画しましょう。過去の遅延メモは、将来の「余裕日数」設定に直結します。
SKUごとの優先順位付けがない運用の問題
全SKUを同じ濃度で追うのは非効率です。売れ行きに応じて管理の濃淡をつけましょう。
【SKU分類の例】 A級:毎日チェック、欠品厳禁 B級:週1回チェック、適正在庫維持 C級:月1回チェック、保管料対策優先
評価に使う基本指標は3つ。在庫回転率(一定期間に在庫が何回売れたか)・セルスルー率(入ってきた在庫に対しどれだけ売れたか)・在庫日数(今の在庫が何日分あるか)です。難しく感じる必要はありません。在庫日数が短いのに補充が遅いSKU、セルスルー率が低く保管料負担が重いSKUから対応すれば、全体のムダが急速に減ります。
発注ロットや入出庫ミスなど運用上のボトルネック
発注ロットが大きすぎると滞留と保管料が一気に増えます。仕入先と相談し、小分け納品や最低発注量の見直しを交渉しましょう。また、受領時のラベル不備や重量・サイズ誤差、販売不可在庫の放置は回転を止める代表的な落とし穴です。納品前チェックリストと、問題発生時の手順(再ラベル、返送、廃棄)を決めておくと復旧が速くなります。
意思決定は、保管料・販売手数料・追加手数料・返送/廃棄費を合算した総コストで比較しましょう。「利益が出る在庫量」を数字で把握しておくと、ブレない判断ができます。
測る仕組みを整える KPIと必要データ

指標は「同じ式で、同じ期間」で測ることが大切です。計測方法の統一がブレをなくし、改善の手応えを明確にします。
在庫回転率・在庫日数・欠品率の計算式を決める
計算式をチームで共有し、毎回同じ方法で測ることで数字が意思決定に役立ちます。代表的な式は次の通りです。
在庫日数 = 現在庫 ÷ 直近の1日平均販売数 在庫回転率 = 期間販売数 ÷ 平均在庫数 セルスルー率 = 期間販売数 ÷(期初在庫+期間入荷数) 欠品率 = 品切れ日数 ÷ 対象期間日数
いずれも30日など一定期間で統一すると、経時変化が見やすくなります。セールやメディア露出など特殊要因はメモして、通常の発注量に入れ過ぎないようにしましょう。
Seller Centralで取得すべき項目とスプレッドシートの必須列
日々見る画面は絞り込みます。主に在庫健全性・FBA在庫年齢・フルフィルメント在庫、そしてRestock Inventory/Inventory Performance、ビジネスレポート、広告レポート(ブランド分析含む)です。以下はスムーズに分析するための必須列例です。
【基本管理項目】 SKU/ASIN/商品名 直近30/60/90日の販売数と1日平均 現在庫、入荷中、予約、販売不可在庫 在庫年齢(0–90/91–180/181–270/271–365/365日以上) 価格、最低価格、想定手数料、原価、概算粗利 (任意:レビュー数、返品率、競合数)
この形にそろえておくと、在庫が増えるほど差が出る「更新のしやすさ」が手に入ります。まずはA級SKUから埋めていくと負担が軽く、効果も早く出ます。
データ期間の選び方と平均在庫の扱い方
定番SKUは30・60・90日で傾向を確認し、季節SKUは前年同時期も合わせて比較します。平均在庫は「期首と期末の平均」で実務上十分です。より精度を上げたい場合は週次や日次の平均を使いましょう。売上が跳ねた期間は“特殊要因”と記録し、平時の発注量に過剰反映しないのが安全です。
実務で使える補充ルールと過剰在庫対策

再発注ルールと過剰在庫対策を運用に落とし込むことで、日々の迷いが減ります。数字から自動的に「やるべきこと」が浮かぶ状態を目指しましょう。
再発注点と安全在庫の作り方と算出例
再発注点は、現場の遅延も含めた現実的な数値で設定します。「理想」ではなく「実際のリードタイム」で計算するのがコツです。
再発注点 = 1日平均販売数 × リードタイム + 安全在庫
安全在庫はシンプルに「余裕日数」でOKです。販売の波が大きいSKUは、直近で最も売れた週や最大遅延日数を基準に、余裕を上乗せしてください。A級SKUは広め、C級SKUは狭めに取ると、資金効率と欠品回避の両立に役立ちます。
発注数量の決め方とロット最適化の考え方
まず目標在庫日数を決め、その日数から逆算します。重くて保管料が高いSKUほど短めが基本です。
発注数量 = 目標在庫日数 × 1日平均販売数 - 現在庫 - 入荷確定数
ロット最適化の考え方はシンプルで構いません。送料や梱包単価の境目、ケース入数、倉庫の受領スピードを合わせて最適点を探ります。「気持ちよく回る量」をSKUごとにメモしておくと、次回からの判断が一段と速くなります。
- 最小発注数・ケース入数に合わせる(端数は次回)
- 送料や手数料が下がる数量の境目を意識
- 大量抱え込みよりも小回り重視。ただし欠品は避ける
過剰在庫の処理方法と欠品を防ぐ運用ルール、ツール導入判断
過剰在庫は価格・露出・見せ方の総合施策で圧縮します。価格は小幅に調整し、広告は入札を微調整。在庫年齢が進んだSKUの露出を意図的に強化し、セット販売や色・サイズの組み替えで需要のすき間を拾います。見通しが立たないSKUは、保管料や長期在庫手数料、返送/廃棄費を合算して、損切りのラインを数値で決めましょう。
欠品対策は、在庫日数の色分け管理が効きます。規定値以下で黄色警告、再発注点割れで赤色、と視覚的に管理するだけで対応が速くなります。受領が遅い納品は早期に原因確認し、必要に応じて分割納品でリスクを分散。まずはAmazonのRestock InventoryやInventory Performance、料金シミュレーターを使い倒し、SKU数が多い・多拠点・複数モール連携・高度自動化が必要になった段階で外部ツールを検討するとコスト効率が良くなります。導入時は「どの指標を、どの判断に使い、どこまで自動化するか」をあらかじめ言語化してブレを防ぎましょう。
まとめ
在庫が回らない悩みは、症状の見える化→原因の特定→運用ルール化の順で解きほぐすと前進が速くなります。今日できる小さな改善を一つ積み重ねれば、資金の流れは安定し、機会損失も確実に減ります。まずはA級SKUから、次にB級、最後にC級へ。手順を決めて淡々と回すことが、最短の近道です。
<ご注意>本記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。Amazonの仕様・ガイドライン・ルール等は予告なく変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトやAmazonセラーセントラル等をご確認ください。
