楽天でお店を運営していて、「誰に何を届ければリピートにつながるかわからない」「広告やクーポンの効果がバラバラで悩んでいる」と感じていませんか。
RFM分析は、最近の購入(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)という3つの視点でお客様を分けて、効率よく対応を考えるシンプルな手法です。
この記事では、初心者の方にもわかりやすくRFMの考え方と実際のやり方、そして楽天で使える具体的な活用例まで丁寧に解説します。一緒にお客様の傾向をつかんで、無駄なくリピーターを増やしていきましょう。

準備:権限と前提の確認
RFM分析と各種分析ツール、R-Messe(問い合わせ・メルマガ管理ツール)等の連携は、限られたリソースでも効果的にリピート率を高める実践的手段です。まずは必要な準備と注意点を確認しましょう。
注:利用する分析機能やツールは、店舗の契約プランや権限によって利用可否が異なります。実装前に必ずRMSの「サービス利用権限」画面で確認し、必要に応じて楽天サポートやツール提供元へお問い合わせください。
必要なアカウントと権限一覧
分析・施策実行に必要な権限を事前に確認しましょう。
| 必要な権限 | 確認ポイント |
|---|---|
| RMS受注データ出力 | 受注管理メニューからCSV出力できるか |
| Rakuten Analytics | 店舗カルテやアクセス分析の閲覧権限があるか |
| R-Messe(R-SNS) | メッセージ配信・クーポン送付の権限があるか |
| クーポン・メルマガ | 発行・配信の操作権限があるか |
| データ取扱 | 個人情報管理ルールを確認済みか |
共通顧客IDとキー選定のポイント
楽天において顧客を識別するキーの選定は非常に重要です。店舗側には「楽天会員ID」や「実メールアドレス」は開示されないため、マスキングメールアドレスを「共通キー」に設定するのが基本です。
ゲスト購入や複数アカウントの統合は難易度が高いため、まずは「受注番号」と「マスキングメールアドレス」でシンプルに管理することをお勧めします。また、個人情報(氏名・住所・電話番号)が含まれるデータを扱う際は、必ずパスワード付きファイルで管理するなどセキュリティを徹底してください。
事前確認項目とよくある落とし穴
データ整理の前に基準を統一しておくことで、手戻りを防げます。
まず、返品・キャンセルデータの除外基準を決めましょう。次に、M(金額)の定義ですが、本稿では計算を単純化するため「商品代金(税込)」として統一し、ポイント還元分や送料は除外して考えます。社内テスト注文やノベルティのみの0円注文もノイズになるため除外対象です。
なお、RMSからダウンロードするCSVの仕様(列の並び等)はシステムの更新により変わる可能性があるため、作業前には都度確認するようにしてください。
データ取得と前処理

RFM計算に必要なデータ取得と前処理のポイントを整理します。
RMSから出力すべき必須項目
RMSの「受注・決済管理」からダウンロードできるデータのうち、RFM計算に必要な項目です。
| 必須項目 | 活用目的 |
|---|---|
| 受注番号 | 注文の一意識別子として |
| 注文日 | R(最近購入)の計算に |
| メールアドレス | 顧客識別子(マスキングされたもの) |
| 商品情報 | 商品コード・数量・金額 |
| 金額関連 | 商品金額、送料、値引き額、ポイント使用額 |
| 注文ステータス | キャンセル・返品の判別に |
RMS出力のCSVは、取り込み設定によって項目順が異なる場合があるため、Excel等に取り込む際は列ズレに注意してください。
データのクレンジング手順
データを分析可能な状態にするために、以下の手順で整形を行います。
- RMSから「通常購入データ」および「共同購入データ」等のCSVをダウンロードします。
- キャンセル、返品データの行を削除するか、金額を0に修正して集計対象外にします。
- 日付データのフォーマットを「YYYY/MM/DD」形式に統一します。
- 金額データに含まれる「円」やカンマ記号を除去し、計算可能な数値型に変換します。
RFM集計とセグメント設計

RFMの定義から実務で使えるセグメント設計までを解説します。
RFMの定義と基準期間の決め方
R(Recency):基準日から最終購入日までの経過日数が短いほど高評価。
F(Frequency):基準期間内の注文回数が多いほど高評価。
M(Monetary):基準期間内の購入金額合計が大きいほど高評価。
基準期間は商材特性に合わせて設定します。日用品なら半年、季節商品なら1年が目安です。
Excelでのピボット集計とスコア化手順
Excelを使った基本的な集計手順です。
- 受注明細データをテーブル化し、ピボットテーブルを作成します。
(行:マスキングメールアドレス、値:注文数カウント、購入金額合計、最終購入日)
- 結果を別シートにコピーし、「基準日 – 最終購入日」で経過日数を計算します。
- R・F・Mそれぞれを5段階評価に変換します。
Rの例:0-30日=5, 31-60日=4… 241日以上=1
Fの例:5回以上=5, 3-4回=4… 0回=1
Mの例:上位20%=5… 下位20%=1
- R・F・Mのスコアを連結して「RFMスコア」列を作成します(例:「545」)。
上記の閾値は一般的な目安です。店舗の規模や商材特性に合わせて調整し、検証しながら最適化することをお勧めします。
実務で使えるセグメント例とラベリング基準
顧客の状態と期待行動に基づいたセグメント例です。
| セグメント名 | 条件 | 期待できる反応 |
|---|---|---|
| 優良顧客 | R≥4 かつ F≥4 かつ M≥4 | 新商品への高い反応率 |
| 伸びしろ顧客 | R≥4 かつ F≤3、またはF=1でもM高 | 2回目購入の可能性 |
| リピート有望 | R≥4 かつ F=2-3 | 定期的な購入習慣化 |
| 高単価単発 | F=1 かつ M≥4 | 関連商品への反応 |
| 低単価高頻度 | F≥4 かつ M≤2 | まとめ買い提案に反応 |
| 要てこ入れ | R=2-3 かつ F=2-3 | 思い出し購入 |
| 休眠予備軍 | R=2以下 | 緩やかな再訪 |
| 休眠客 | R=1 | 限定オファーへの少数反応 |
セグメント別施策と実践運用

セグメントごとの施策と運用のポイントを紹介します。
各セグメント向けの具体施策案
セグメントごとの特性に合わせて、アプローチの手法を変えていきましょう。
優良顧客へのアプローチ
お店のファンである彼らには、シークレットクーポンの配布やレビューキャンペーンの案内が効果的です。特別感を感じてもらうことで、さらなるロイヤリティ向上を狙います。
伸びしろ顧客へのアプローチ
まだ定着していない層には、初回購入フォローメールやLINE公式アカウントへの登録誘導を行い、接点を維持することが重要です。
リピート有望層へのアプローチ
定期購入の習慣化を促すため、次回使えるサンキュークーポンや、購入品と相性の良い関連商品を紹介します。
休眠予備軍・休眠客へのアプローチ
しばらく来店がない層には、楽天スーパーSALEやお買い物マラソン等の大型イベントに合わせて「カムバック」訴求を行い、再訪のきっかけを作ります。
※クーポンやポイント施策を実施する際は、必ず楽天のプロモーションガイドラインを確認し、遵守してください。
R-Messeやメルマガでの配信設計
分析結果を実際の配信に活かすには、ツールの使い分けがカギとなります。
R-Messe(問い合わせ管理)では、購入回数や最終購入日での絞り込み機能を活用し、対象セグメントに近い顧客へメッセージを送ります(※一斉配信には制限がある場合があります)。
メルマガ配信では、「購入者リスト」としてCSVを取り込み、特定セグメント専用の配信リストを作成してクーポン付きメルマガを送るのが定石です。
また、同梱物・チラシも重要です。F1(初回購入)層には、次回購入への導線となるチラシやQRコードを必ず同梱し、オフラインからオンラインへの再訪問を促しましょう。
A/Bテスト案と効果検証の進め方
施策の効果は、クーポン利用枚数、クリック率、転換率(CVR)などの指標で計測します。メルマガの件名、クーポンの割引率、配信タイミング(朝 vs 夜)などを少しずつ変えてテストを行います。単発の結果で判断せず、スーパーSALEやお買い物マラソン等のイベントごとに検証を繰り返すことで、勝ちパターンが見えてきます。
外部CRMツールとの連携と自動化

分析と施策を効率化するためのツール活用について解説します。
注:楽天RMSとAPI連携できる認定ツールを利用することで、セキュリティを保ちながら効率化が可能です。
API連携ツールの活用メリット
手動でのCSV分析には限界があるため、規模が大きくなってきたらツールの導入を検討しましょう。RMSから毎日自動で受注データを取り込み、RFM分析を自動更新してくれるだけでなく、「購入から30日経過」などのトリガーで自動的にメールやLINEを配信できる機能もあります。何より、個人情報保護に対応した環境で安全にデータを管理できるのが最大のメリットです。
ツール選定のチェックリスト
導入を検討する際は、以下のポイントを確認してください。
- 楽天の「RMS Service Square」認定製品であるか
- RFM分析機能が標準で備わっているか
- LINE公式アカウントやメルマガとの連携機能があるか
- 導入後のサポート体制(設定代行など)があるか
よくあるトラブルと対処法
運用時によくあるトラブルとして「メールが届かない」ケースがありますが、これは楽天のマスクアドレスに有効期限がある場合や、お客様が受信拒否設定をしていることが原因です。これを補うためにLINE連携などの併用が推奨されます。
また、「セグメントを細かくしすぎる」のも失敗の元です。対象人数が少なすぎると効果が見えにくいため、最初は「購入経験あり/なし」「優良/普通」程度の大枠から始めましょう。
まとめ
RFM(購入の最近度・頻度・金額)は、誰に何を届ければリピートにつながるかをシンプルに教えてくれる道具です。
本記事の流れに沿えば、権限確認→RMSデータ整理→ExcelでのRFM算出→セグメント設計→施策実行→検証という流れを進められます。購入の最近さや頻度、金額の違いで優先度や伝え方を変えれば、無駄を減らして効果を高められます。定期的な見直しで季節変動や新商品反応も取り込みましょう。まずは今日の顧客を分けて一歩を踏み出してください。
<ご注意>本記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。楽天市場の仕様・ガイドライン・ルール等は予告なく変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトや楽天RMS等をご確認ください。
