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Amazonアカウント停止の対策ガイド│最短で復旧するための手順を解説

Amazonのアカウントが停止し売上金が留保される事態は、EC事業者にとって大きな危機です。しかし、ここで焦って感情的なメッセージを送ったり、不備のある書類を提出したりすることは避けてください。Amazonの審査部門(アカウントスペシャリスト)は、提出された事実と、改善策を評価基準としています。

アカウント再開の鍵は、Amazonが求める「基準」を正確に満たすことに尽きます。この記事では、数多くの復旧事例に基づき、停止理由の特定から、有効な証拠の揃え方、審査を通過する改善計画書(POA)の構成までを解説します。

ステップ1:停止理由と現状の正確な把握

最初に行うべきは、停止の原因と範囲を正確に特定することです。通知メールの内容と管理画面の情報を突き合わせ、Amazonが何を問題視し、何を求めているかを冷静に分析します。

通知メールと管理画面の照合

停止通知メールは重要な手がかりですが、それだけでは情報が不足している場合があります。必ずセラーセントラルの「アカウントヘルス(健全性ダッシュボード)」を確認し、以下の項目を整理してください。

  • 違反の種別(真贋調査、知的財産権侵害、高い注文不良率、関連アカウントの停止など)
  • 対象の識別子(ASIN、SKU、注文番号、または特定のブランド名)
  • アカウントへの影響(特定の出品削除のみか、アカウント全体の停止か)
  • 要求されているアクション(請求書の提出、改善計画書の提出、またはその両方)

特に「アカウントヘルス」の各項目にある「申し立て」ボタン付近には、メールには記載されていない具体的な提出要件(例:過去365日以内の請求書、全在庫の削除など)が表示されていることがあります。これを見落とすと、何度提出しても審査を通過できません。

停止レベルによる対応の優先順位

アカウントの制限状態によって、対応のリソース配分を決定します。

停止の状態状況の解説初動の方針
出品の削除

(ASIN単位の停止)

特定の商品のみ販売不可。

アカウント自体は稼働中。

放置するとアカウント全体の停止に発展するリスクあり。

該当商品の証拠収集と改善計画に集中する。

アカウント停止

(一時停止)

全商品の販売権限が停止。

売上金の入金も保留。

最優先事項。全ての業務を止め、

包括的な改善計画書と根拠資料の作成に注力する。

アカウント閉鎖

(事実上の契約解除)

複数回の審査不通過や重大な違反。

復旧難易度は極めて高い。

新規の客観的事実や法的根拠がない限り再審査は困難。

弁護士など専門家への相談も検討が必要。

ステップ2:根本原因の特定と分析

なぜこの違反が発生したのか。Amazonは表面的な謝罪ではなく、「管理体制の欠陥」に対する深い分析を求めています。改善計画書(POA)の核となる「根本原因」を特定します。

真贋調査(商品の本物・偽物の疑義)の場合

真贋調査では、「商品は間違いなく本物である」という主張だけでは不十分です。「なぜAmazonや購入者が偽物だと疑うに至ったか」を分析します。多くの場合、仕入れルートの信頼性商品の状態が論点となります。

  • 仕入れ先はメーカーや正規代理店か(小売店やフリマサイトからの転売は、新品としての証明能力が低くなります)
  • 商品管理に問題はないか(並行輸入品と正規版の混同、旧パッケージの混在など)
  • 検品プロセスは適切か(返品された商品が再販され、使用感があると判断されていないか)

知的財産権(IP)侵害の場合

商標権、著作権、意匠権、特許権のいずれに抵触したかを確認します。商品名や説明文での他社ブランド名の使用(商標権)、画像の無断転載(著作権)などが主な原因です。この場合、Amazonへの申し立てに加え、権利者への直接連絡と取り下げ依頼が有効な手段となります。権利者からAmazonへ「侵害報告の取り下げ」通知が届けば、早期解決につながります。

パフォーマンス低下(ODR/LSRなど)の場合

出荷遅延率や注文不良率が悪化している場合、システム設定と人的ミスの両面から原因を掘り下げます。「在庫管理ツールの同期エラー」「担当者の不在による発送漏れ」「梱包資材の欠品」など、「いつ・誰が・なぜ」ミスをしたのかを具体的に特定してください。「注意不足」という抽象的な原因ではなく、業務フロー上の欠陥を見つけ出す必要があります。

ステップ3:有効な証拠書類の準備

審査担当者は膨大な数の申し立てを処理しています。そのため、提出書類は一目で「有効」と判断できる形式でなければなりません。不鮮明な画像や不備のある書類は、即座に却下される原因となります。

請求書・領収書の必須要件

真贋調査において、請求書は最も強力な証拠です。以下の要件を一つでも満たさない場合、証拠能力なしと判断される可能性があります。提出前に必ず指差し確認を行ってください。

  • 発行日:アカウント停止日より前で、かつ過去365日以内の日付であること。
  • 発行元の情報:仕入れ先の会社名、住所、電話番号、WebサイトのURLが明記されていること。
  • 宛名:セラーセントラルに登録されている「正式名称」および「住所」と完全に一致していること。
  • 商品情報:具体的な商品名、型番、数量が記載されていること。(「雑貨一式」などの曖昧な表記は不可)
  • 数量の整合性:過去の販売数と現在の在庫数をカバーできる仕入れ数量が証明できること。

価格情報は黒塗り(マスキング)が可能ですが、それ以外の情報は一切加工してはいけません。スキャンデータまたは高解像度の写真をPDF化し、ファイル名は「請求書_ASIN_仕入先名」のように内容が分かるように設定します。WordやExcelで自作した書類は改ざんを疑われるため、提出は厳禁です。

ステップ4:改善計画書(POA)の作成

証拠が揃ったら、改善計画書(Plan of Action)を作成します。これは反省文ではなく、今後のビジネス運用における「仕様書」です。具体的かつ実行可能な再発防止の仕組みを提示する必要があります。

1. 根本原因(Root Cause)

「何が起きたか」という事象だけでなく、「なぜ起きたか」という深層原因を記述します。

× 不十分な例:「在庫確認を忘れて欠品を出した」
○ 推奨される例:「在庫管理を目視のみに依存しており、実在庫とシステム上の数値を照合する定時のフローが存在しなかったため、データ上のズレを検知できなかった」

2. 既に実施した一時的な措置(Immediate Actions)

問題発生直後に講じた対応を記述します。これらはすべて「完了形」である必要があります。

・購入者への返金および謝罪対応の完了
・該当商品の出品取り下げと在庫の廃棄処分
・問題のあるカタログ情報の削除または修正
・カスタマーサポートへの経緯報告

3. 再発防止策(Preventative Measures)

ここが審査の最重要ポイントです。「今後は気をつけます」「スタッフを教育します」といった精神論では審査を通過できません。

・「誤出荷を防ぐ」
→「出荷前にバーコードリーダーによる検品システム(ツール名:〇〇)を導入し、誤出荷を物理的に防止するフローに変更した」

・「知識不足を解消する」
→「Amazon規約の確認時間を毎週月曜日に設け、全スタッフに理解度テストを実施する運用を開始した(添付資料:テスト内容)」

担当者名、導入ツール、開始日、確認手順など、5W1H(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)を明確にした行動計画を提示します。

ステップ5:提出と審査後の対応

POAと証拠書類の準備が整ったら、セラーセントラルから提出します。

提出時の注意点

POAの本文内に「添付資料1:請求書_〇〇」のように参照先を明記し、審査担当者がスムーズに資料を確認できるよう配慮します。読み手の負担を減らす構成が、審査スピードの向上につながります。

追加情報を求められた場合

一度の提出で承認されないケースも多々あります。Amazonから返信があった場合、定型文に見えても内容を精査してください。「情報が不足しています」「対策が具体的ではありません」といった指摘が含まれています。感情的に反論せず、指摘された不足部分のみを補強して再提出します。全く同じ内容を連投することは、スパムと判定されるリスクがあるため避けてください。

まとめ

アカウント停止からの復旧は、通知内容を冷静に分析し、真正な証拠書類を揃え、論理的な改善計画を提示する。この手順を一つひとつ確実に踏むことが、結果として最短でのアカウント再開につながります。事実に基づいた冷静なアクションだけが、取り戻す唯一の方法です。

手順を一つひとつ確実に踏むことが、結果として最短でのアカウント再開につながります。

<ご注意>本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。Amazonの仕様やガイドラインは予告なく変更される場合がありますので、最新情報は公式サイトやセラーセントラル等でご確認ください。

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