Amazon出品で「商品は売れているはずなのに、なぜか手元の資金がいつも足りない」「通帳の残高が増えるどころか、次の仕入れ代金の支払いに追われている」といった不安を感じることはありませんか。
これは多くのセラーが直面する典型的な悩みですが、実は非常に危険なサインです。帳簿上は利益が出ていても、現金が回らなくなれば事業は継続できません。
この記事では、難しい会計用語は極力使わず、「在庫の回転」を高めて「手元資金」を増やすための具体的な手法を解説します。
まずは現状を数字で正しく把握し、今すぐやるべき短期対策と、将来に向けた改善の両輪で、ショップ運営を目指しましょう。
感覚に頼らない!「数字」で現状を把握する

「なんとなく売れ残っている気がする」「たぶん大丈夫だろう」といった感覚での判断は、資金繰りを悪化させる最大の原因です。
まずは、Amazonセラーセントラルのデータを使って、ご自身のショップの状態を正確に分析しましょう。見るべき指標は以下の4つです。
必ずチェックすべき4つの重要指標(KPI)
1. 在庫回転率
これは「持っている在庫が、どれくらいのスピードで現金に変わっているか」を示す、最も重要な指標です。
簡易的な計算式は「直近30日間の販売数 ÷ 現在の在庫数」です。
- 1.0以上:1ヶ月以内に在庫が一回転しています。非常に健全です。
- 0.5〜1.0:1〜2ヶ月で売り切れるペースです。標準的ですが、改善の余地があります。
- 0.5未満:危険信号です。在庫がすべて現金化されるまでに2ヶ月以上かかります。資金が在庫として眠っている状態です。
2. 在庫日数
その商品がFBA倉庫に納品されてから、何日経過したかを示す数字です。
Amazonでは、保管期間が長くなればなるほど、保管手数料とは別に「長期在庫保管手数料」が発生するリスクが高まります。
特に「在庫日数が90日を超えている商品」は、利益を減らす「負債」になりつつあると認識してください。
3. 長期保管手数料の対象在庫
在庫健全性レポートを確認し、すでに「長期在庫保管手数料」が発生している、あるいは次回の査定で発生見込みのSKU(商品)がないか確認します。
これらは「置いているだけで赤字を生む」状態ですので、最優先で対処が必要です。
4. 商品サイズ・重量の登録情報
意外な盲点ですが、Amazonに登録されている商品のサイズや重量が、実物よりも大きく(重く)計測されていることがあります。
FBA手数料はサイズと重量で決まるため、もし間違って大きく登録されていると、販売するたびに無駄な手数料を払い続けていることになります。
「再計測リクエスト」を行えば修正できるため、利益率が低い商品は一度確認することをお勧めします。
データの取得方法
これらのデータは、特別なツールを使わなくてもAmazonセラーセントラルから無料で取得できます。
- 在庫健全性レポート:過剰在庫の数や、在庫切れのリスクがある商品が一覧で分かります。
- 在庫年齢レポート:どの商品が長期間売れ残っているか(滞留しているか)をSKUごとに確認できます。
- 発注推奨レポート:過去の販売データに基づき、Amazonが推奨する納品数を確認できます(あくまで参考値として活用します)。
なぜ資金が不足するのか? 原因の深掘り

資金不足に陥る原因の多くは、「在庫の滞留(お金が戻ってこない)」と「発注のミスマッチ(お金を出しすぎている)」の2点に集約されます。
在庫が資金を食いつぶすメカニズム
在庫は「資産」として計上されますが、キャッシュフローの観点からは「現金化されるのを待っているお金」です。
以下のような状態になっていないか、振り返ってみてください。
- 在庫年齢90日以上の商品が、全在庫の3割を超えている。
→ 資金の3割が3ヶ月以上動かせない状態です。これでは新しい仕入れができません。 - 毎月、長期保管手数料を支払っている。
→ 利益が出ない商品を倉庫に置くために、利益が出ている商品の儲けを使っています。 - 広告費をかけているのに、ACoS(売上高広告費比率)が高い。
→ 売れない商品を無理やり売ろうとして、広告費という追加の現金を流出させています。
商品の「回転スピード」に合わせた管理不足
すべての商品を一律に管理していませんか?
「飛ぶように売れる商品」と「たまにしか売れない商品」では、発注や在庫管理のルールを明確に分ける必要があります。
| 回転率 | 商品の特徴 | 管理と対策の方向性 |
|---|---|---|
| 高回転(1.5以上) | 【稼ぎ頭】即座に売れていく人気商品。 資金回収が早い。 | 在庫切れは絶対NG。 機会損失を防ぐため、少し多めに在庫を持ってもすぐに現金化されます。強気で運用しましょう。 |
| 中回転(0.5〜1.5) | 【安定株】 コンスタントに売れる定番商品。 | 適量を維持。 過剰在庫にならないよう、こまめな発注を心がけます。キャッシュフローの安定剤です。 |
| 低回転(0.5未満) | 【お荷物予備軍】 ニッチ商品や季節外れ商品。 資金を固定化させる元凶。 | 発注は慎重に、または停止。 利益率が高くても、資金繰りを悪化させます。値下げやクーポンで早期の現金化を最優先します。 |
今すぐできる「短期対策」

手元の資金繰りが厳しい時は、「利益率」よりも「現金の回収スピード(キャッシュ・コンバージョン)」を最優先に考えます。
「赤字を出したくない」と値下げを渋って在庫を持ち続けることが、結果的に保管料と資金繰りの悪化で、より大きな傷を負うことになります。
滞留在庫を現金に変える4つの具体策
「損切り」は失敗ではありません。「資金を流動化させるための戦略的撤退」です。以下の手順で現金化を進めましょう。
- 段階的な値下げ(プライスダウン)いきなり半額にする必要はありません。まずは5〜10%下げて反応を見ます。Amazonのアルゴリズムが反応し、カートボックス獲得率が上がれば売れ始めます。
それでも動かなければ、20〜30%下げて売り切ります。「保管料を払い続けるコスト」と「値下げによる損失」を天秤にかければ、値下げの方がマシなケースがほとんどです。 - クーポン・タイムセールの活用単純な値下げよりも、「お得感」を演出できるクーポンやタイムセールの方が、購入率が高まる傾向にあります。
特に「在庫処分セール」などのAmazon内イベントに参加できれば、露出が一気に増え、早期の現金化が見込めます。 - セット販売(バンドル販売)売れ筋商品のおまけとして滞留在庫をつける、あるいは滞留在庫同士を福袋のようにセットにする方法です。
単体では魅力が薄くても、セットにすることで「お得な商品」に生まれ変わり、客単価アップにも貢献します。 - 広告の「選択と集中」売れない商品を売るために広告費を使うのはやめましょう。ACoSが悪化するだけです。
低回転商品の広告は停止し、浮いた予算を高回転商品の広告に回して、確実に現金を回収するサイクルを加速させます。
最終手段:返送・廃棄の決断
在庫年齢が180日を超え、値下げしても売れる見込みがない商品は、思い切って「返送(手元に戻す)」か「廃棄」の手続きをしましょう。
「もったいない」と思うかもしれませんが、これ以上倉庫に置いて保管料を払い続けることこそが、最大の「もったいない」です。スペースを空けて、売れる商品を入れる準備をしましょう。
外部からの資金調達(つなぎ資金)
在庫処分だけでは追いつかない場合、一時的な資金調達も検討します。
- ファクタリング:Amazonからの売上入金(売掛金)を、権利を譲渡することで早期に現金化するサービスです。手数料は高めですが、審査が早く、最短即日で現金が手に入ります。
- 短期ビジネスローン:銀行や日本政策金融公庫からの融資です。金利は低いですが、審査に時間がかかります。計画的に利用しましょう。
まとめ
Amazon販売における資金繰り改善のポイントは、地道な数字の管理と決断にあります。
「数字を見て、悪い在庫(低回転)を素早く処分し、良い在庫(高回転)の仕入れに集中させる」
このサイクルを高速で回すことができれば、少ない資金でも売上を最大化できます。
まずは週に一度、在庫レポートを確認する習慣から始めてみましょう。その小さな改善の積み重ねが、健全なキャッシュフローを作り上げます。
<ご注意>本記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。Amazonの仕様、手数料、レポートの名称等は予告なく変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトやAmazonセラーセントラル等をご確認ください。
