商品ごとの実利益が見えずに、どの商品が本当に儲かっているのかわからない──そんな悩みはありませんか。販売価格から仕入れ原価だけを引いただけでは、送料や決済手数料、広告費、ポイント還元、返品対応などの「見えにくいコスト」を差し引いていないため、実際の手元に残るお金(実利益)は把握できません。この記事では、必要な費用項目の洗い出し方と、初心者でも迷わないやさしい手順で正確に算出する方法を、具体例とチェックポイントを交えてわかりやすく解説します。一緒に一つずつ計算して、本当の儲けを明らかにしていきましょう。
在庫はあるのに利益が出ないときの状態と原因

表示上の粗利と実利益の違いを見分ける
表示上の粗利(販売価格−仕入原価)と実利益(純利益)(手取り販売収入−全ての直接費・手数料・販促費)には大きな差があります。実利益を正確に出すには、仕入原価に加え、按分した送料・関税、販売手数料、FBA出荷手数料、保管料、広告費、返品コスト、納品・梱包費、ポイント還元などを全て考慮する必要があります。
例えば、売上は伸びているのに手元に残る現金が増えない、値下げで利益が急に消える、という症状があれば要注意です。こうしたケースでは、広告費や返品コスト、季節的な保管料上昇などが見落とされがちです。
サイズや季節で変わる手数料の落とし穴
FBA手数料はサイズ・重量区分ごとに大きく変動します。特に注意したいのは、区分の境界(標準サイズと大型の境界)や季節(10〜12月の保管料上昇)、そして寸法・重量の登録ミスです。数ミリ・数グラムの差で手数料が大幅に上がることがあるため、梱包サイズの最適化や商品情報の定期的な確認が重要です。
| 区分の境界 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|
| 標準と大型の境界 | わずかな差で手数料増加 | 梱包サイズの見直し |
| 季節変動(10〜12月) | 保管料上昇 | 季節前の在庫調整 |
| 寸法・重量の登録ミス | 想定外の手数料 | 定期チェック |
広告と返品が利益を圧迫している兆候
広告費は売上の目安で5〜10%、返品率はカテゴリによって2〜5%が参考値ですが、これは平均的な目安です。広告を止めると売上が落ちる、特定の時期だけ利益が薄くなる、返品やクレームが増えている──こうした兆候があれば、広告の費用対効果や商品説明・梱包の改善を検討してください。
商品ごとに必要な費用を全部洗い出す方法

仕入原価と仕入時の送料や関税の按分方法
仕入原価に送料や関税を按分する際は、「重量ベース」「個数ベース」「金額ベース」のいずれかを定め、SKU単位で一貫して適用することが重要です。重量ベースは総送料を商品重量の割合で分け、個数ベースは個数で割り、金額ベースは価格の割合で按分します。一度選んだ方法は記録しておき、追跡可能にしておきましょう。
Amazon手数料の内訳と重量寸法で変わる費用の把握
主要な手数料には、販売手数料(カテゴリにより売上の一定割合)、FBA出荷手数料(サイズ・重量に応じた固定料金)、保管料(体積×日数、季節変動あり)、その他(ラベル貼り、危険物、長期保管など)があります。これらは変更されることがあるため、必ずAmazon公式の最新情報(FBA料金シミュレーターなど)で確認してください。
保管料・納品費・広告・返品など変動費の1個あたり換算
変動費は期間や季節で変わるため、次のように1個あたりに換算して管理します。保管料は「期間の合計保管料 ÷ その期間の販売個数」、広告費は「期間の合計広告費 ÷ その期間の販売個数」、返品見込みは「販売価格 × 想定返品率」、納品費は「納品関連の合計費用 ÷ 納品個数」です。これらは月次や季節ごとに見直しましょう。
1商品あたりの純利益を正確に計算する手順と式

シンプルな計算式と各項目の入れ方
純利益 = 販売価格 − 仕入原価 − 販売手数料 − FBA出荷手数料 − 保管料 − 広告費 − 返品見込み − その他コスト
計算の流れは次の通りです。まず販売価格と仕入原価を確定し、Amazon公式シミュレーターで販売手数料とFBA手数料を確認します。次に保管料や広告費など変動費を1個あたりに換算し、SKUごとの想定返品率を設定します。最後に全てを合算して純利益と利益率(純利益÷販売価格)を算出します。
実践で使える具体的な数値例
注意: 以下は参考例です。実際の手数料は必ず公式で確認してください。
例:販売価格3,000円、仕入原価1,200円、按分送料100円、販売手数料(10%)300円、FBA出荷手数料400円、保管料(月平均)30円、広告費(売上の8%)240円、返品見込み(3%)90円、その他費用40円の場合、
純利益 = 3,000 − 1,200 − 100 − 300 − 400 − 30 − 240 − 90 − 40 = 600円
利益率 = 600 ÷ 3,000 = 20%
安全マージンを加えた仕入れ判断のルール
転売やせどりで一般的に目標とされる利益率は20%以上ですが、カテゴリや戦略によって最適な目標は異なります。仕入れ判断のチェックポイント例としては、①販売価格が10%下落しても利益が残るか、②返品率が想定より2%増えても黒字か、③広告費が増えても採算が取れるか、④FBA手数料区分の境界に近くないか、を確認することを推奨します。
スプレッドシートとツールを安全に使うコツ

必要な列と主要セルの計算設定の作り方
効率的に管理するための基本列は、SKU/ASIN、販売価格、仕入原価、按分送料・関税、販売手数料、FBA出荷手数料、保管料、広告費、返品コスト、その他コスト、実利益、利益率です。管理用として商品サイズ区分、想定返品率、広告コスト比率、メモ欄を用意すると運用が楽になります。外部参照やルックアップ関数で最新の手数料表を参照するとミスが減ります。
単位ミス防止と実績データで前提を修正する運用フロー
単位の混在は誤差の原因になります。長さはmmかcmに統一、重量はgかkgに統一、通貨は円かドルで明確にしてください。実績データを用いた改善サイクルも重要です。代表SKUで1〜3ヶ月の実績を取り、想定と実績の差を分析し、広告費や返品率などの前提を修正、再シミュレーションして月次で見直す運用を続けることで精度が上がります。
まとめ
表示される粗利だけで安心せず、仕入れ・送料・関税、FBA手数料や保管料、配送費、広告費、ポイント還元、返品対応など見えにくいコストを一つずつ分解して1商品あたりで換算することが肝心です。
スプレッドシートで主要項目を列に分け、手数料表やサイズ分類を参照して誤差を減らし、実績で前提を見直す運用を続ければ、仕入れ判断と価格設定の精度はぐっと高まります。まずは代表SKUで1〜3ヶ月の実績を取り、スプレッドシートで検証→Amazon公式のFBA料金シミュレーターで確認→月次で見直すというサイクルを始めてみてください。費用は定期的に変わるので、必ず最新情報を確認しながら少しずつ改善していきましょう。
<ご注意>本記事の内容は執筆時点の情報に基づきます。Amazonの仕様や料金体系は予告なく変更される場合があるため、最新情報は必ず公式サイトやAmazonセラーセントラルでご確認ください。
