Amazonで販売を始めたものの、「どの数字を見れば良いのか」「どこから改善すべきか」で手が止まっていませんか?
まずは日々の数字を通して状況をつかみ、行動に移せるかどうかが成果を分けます。最初の目標は、毎日同じ指標を同じ場所で見られる“土台”を整えることです。
そのために、売上・広告・在庫・支払いの基本データを無理なく集めてつなぎ、見やすい形に整える流れを解説します。
準備:まずは「ルール作り」から

いきなりデータを触り始める前に、「どのデータをどの順で集めるか」を決め、環境を整えます。保存先はクラウドストレージか社内サーバーの1箇所に統一し、フォルダ構成やファイル名の命名規則を最初に決めてしまいましょう。ここが曖昧だと、後で集計ミスや「どれが最新かわからない」という手戻りが発生します。
アクセス権限とセキュリティ
特に重要なのはセキュリティです。注文データや顧客情報が含まれるファイルは、最小権限(担当者しか見られない状態)での管理を徹底してください。二段階認証の設定、パスワードの定期更新、そして保存先の暗号化は必須です。「誰がどこまで触れるか」を最初に線引きしておくことが、トラブルを防ぐ一番の策です。
データの優先順位とつなぎ方
あれもこれもと欲張らず、まずは「注文」と「広告」の連携から始めましょう。これらが売上の大半を構成するからです。その後に「在庫」、最後に「支払い(手数料など)」を足していくのがスムーズな手順です。
それぞれのデータをつなぐ鍵(キー)となるのは、SKUやキャンペーンIDです。SKUを基準にして、「この商品は、広告費いくらで、何個売れたか」を横串で見られるようにします。
KPIは「最小セット」で見る
追うべき数字も絞り込みます。基本となるのは、売上金額・注文数・客単価の3つ。これに加えて、サイトへの訪問数(セッション)・購入率(CVR)、そして広告の効率を見るACOS(売上高広告費比率)とROAS(広告費用対効果)があれば十分です。これらをSKUごと、日付ごとに並べて、毎日「同じ物差し」で比較できるようにしましょう。
収集:自動化で「手作業」をゼロにする

毎朝レポートをダウンロードしてコピペするのは時間の無駄です。まずはGoogleスプレッドシートなどを使って、決まったフォルダのCSVファイルを自動で読み込む仕組みを作りましょう。「人が触らなくても勝手に最新化されている」状態を小さく作ることがコツです。
ノーコードで始める自動化
プログラミングができなくても大丈夫です。「決まったフォルダの最新ファイルを読み込む」というシンプルな仕組みなら、スプレッドシートの関数や標準機能で実現できます。
その際、日付は「日付型(YYYY/MM/DD)」、金額は「数値型」に統一し、SKUの表記揺れ(全角半角の違いなど)を補正するルールを作っておけば、集計時のエラーは激減します。
API連携へのステップアップ
運用に慣れてきたら、Amazon公式のAPI(SP-API)を利用した完全自動化へ進みます。深夜にデータを取得し、朝出社した時には集計が完了しているのが理想です。API開発が難しい場合は、安価な外部のデータ連携ツール(コネクタ)を利用するのも賢い選択です。コストと工数を天秤にかけ、自社に合った方法を選びましょう。
整形:データのダッシュボード化

集めたデータを混ぜる前に、基準を揃える作業が必要です。日付のタイムゾーンは日本時間で統一するのか、返品された注文はどの日の売上から引くのか。こうしたルール(定義)を決めて全データに適用します。集計において最も大切なのは、技術よりも「ルールの明確化」です。
「一目でわかる」ダッシュボードを作る
画面構成は「全体 → 商品 → 広告」の順にドリルダウンできるように設計します。
上段に全体の売上やROASなどの重要指標を置き、中段に時系列のグラフ、下段にSKU別やキャンペーン別の詳細一覧を配置します。異常値(在庫切れやACOS悪化)があれば色が変わるように設定しておくと、「いま何が起きているか」が3クリック以内で把握できる最強のツールになります。
粗利計算のポイント
本当の利益を知るために、粗利計算も自動化したいところです。「売上 - 仕入 - 手数料 - 広告費」が基本式ですが、広告費をSKUごとにどう配分するかが悩みどころです。「売上比率で按分する」か「クリック数で按分する」か、ルールを決めて固定しましょう。計算根拠さえ明確なら、分析の精度は担保されます。
運用:データの精度を守り、活用する

ダッシュボードは作って終わりではありません。定期的なチェックが必要です。週に一度はセラーセントラルの数値とダッシュボードの合計値を突き合わせ、ズレがないか確認します。もしズレていれば、SKU単位、日付単位と掘り下げていけば原因はすぐに特定できます。
異常を知らせる「アラート」機能
データを見る時間を減らすために、異常検知を仕組み化します。「在庫が残り○日分を切った」「広告のACOSが○%を超えた」といった場合に、チャットやメールで通知が飛ぶように設定しましょう。人間は「通知が来たときだけ判断する」という運用に変えることで、業務効率は劇的に向上します。
マスター管理で属人化を防ぐ
SKUごとの原価や税区分、広告キャンペーンの命名ルールなどは、個人のメモではなく「マスターデータ」として一元管理します。誰がいつ変更したかの履歴も残るようにすれば、担当者が変わってもスムーズに運用を引き継げます。
まとめ
準備 → 収集 → 整形 → 運用。この手順で小さく始め、手作業を減らしていくのが最短ルートです。
まずはスプレッドシートを使って、売上と広告のデータを1つの画面で見える化することから始めてみてください。
<ご注意>本記事は執筆時点の情報に基づいています。Amazonの仕様・ガイドラインは変更される場合があります。最新の内容は必ず公式サイト等でご確認ください。
