Amazonでの販売において、保険加入は「売上が増えてから検討すれば良いもの」ではありません。
単なる安心料ではなく、ビジネスを継続するための「必須条件(参加資格)」であり、万が一の際に自分自身を守るための重要な手段です。
実は、Amazonでは一定の条件を満たすと保険への加入が「規約上の義務」になります。
また、中国輸入やOEM販売を行う場合、法律上はあなたが「製造業者(メーカー)」とみなされ、製品事故の全責任を負うことになるのをご存知でしょうか?
この記事では、Amazon出品者が保険に入らないと直面する法的・金銭的リスクと、Amazonの厳しい規約をクリアするために必要な保険の選び方、そして提出手順までを、初心者向けに徹底解説します。
なぜAmazon出品者に保険が「絶対必要」なのか?

保険加入が必要な理由は大きく分けて3つあります。
「Amazonのルール」「日本の法律」「金銭的リスク」の観点から見ていきましょう。
理由1:Amazon規約による「加入義務」があるから
これが最も直接的な理由です。
Amazon.co.jp(日本)の「コマーシャル責任保険ポリシー」では、以下の条件に該当する出品者に対し、適切な保険への加入と証明書(COI)の提出を求めています。
- Amazonから保険加入の要請(通知)が届いた場合
- 特定のカテゴリ(一部のベビー用品や家電など)を出品する場合
日本では主に「Amazonからの通知」が義務化の合図となります。
この通知を無視して未加入のままでいると、「出品権限の停止」や「売上金の留保」といったペナルティを受けるリスクがあります。
通知は突然届くため、いつ言われても提出できるように準備しておくのがセラーの常識となりつつあります。
理由2:輸入・OEM販売者は「製造責任」を負うから
「自分は仕入れて売るだけだから、事故が起きてもメーカーの責任でしょう?」というのは大きな誤解です。
日本のPL法(製造物責任法)では、以下の事業者は「製造業者」とみなされ、事故の全責任を負うことになります。
- 海外から商品を輸入した事業者(輸入業者)
- 自社ブランド名を付けて販売した事業者(OEM事業者)
- 製品の加工・修正を行った事業者
例えば、あなたが輸入したモバイルバッテリーが発火して購入者の家が全焼した場合、被害者は中国の工場ではなく、輸入したあなたに損害賠償を請求します。
その額は数千万円〜数億円になることも珍しくありません。個人事業主であっても、この責任からは絶対に逃れられません。
理由3:Amazonの「A-to-z保証」では守りきれないから
Amazonには「マーケットプレイス保証(A-to-z保証)」という購入者保護の仕組みがありますが、これはあくまで「商品が届かない」「壊れていた」といった取引上のトラブルを補償するものです。
「商品が原因でケガをした」「家財が燃えた」といった拡大損害(PL事故)については、出品者が自身の保険で対応する必要があります。
保険がない状態で高額な賠償請求が来れば、事業の継続が困難になってしまいます。
Amazon出品者が加入すべき保険の種類

では、具体的にどんな保険に入ればよいのでしょうか。
Amazon販売において検討すべき保険は主に以下の3つです。
1. PL保険(生産物賠償責任保険) ※最重要
Amazonの規約で求められているのがこの保険です。
販売した製品が原因で、第三者の身体や財物に損害を与えた場合の賠償金をカバーします。
- 例:販売した椅子が壊れて購入者が骨折した。
- 例:販売した化粧品で深刻な肌トラブルが起きた。
2. 受託者賠償責任保険(倉庫保険)
主にFBM(自社出荷)などで、在庫を自社倉庫や委託倉庫で保管している場合に必要です。
火災、盗難、水漏れなどで在庫商品がダメになった場合の損害をカバーします。
※FBA倉庫内の破損・紛失は、原則としてAmazonの補填対象になりますが、FBA納品前の輸送中などは自己責任となります。
3. リコール保険(生産物品質保険)
製品に欠陥が見つかり、自主回収(リコール)を行う際の費用をカバーします。
新聞広告費、回収送料、返金費用、廃棄費用などはPL保険では対象外となることが多いため、特約として追加するか検討が必要です。
特に食品や電化製品を扱う場合は加入を強くおすすめします。
FBAとFBMで変わる「守るべきリスク」

保険の必要性は共通ですが、販売形態(FBAかFBMか)によって、重点的にケアすべきリスクの所在が異なります。
FBA(Amazon出荷)の場合
FBAの最大のメリットは、物流トラブルの責任をAmazonが肩代わりしてくれる点です。
配送中の破損や遅延、倉庫内での紛失はAmazonが補填してくれるケースが多いため、物流保険の優先度は下がります。
その分、「製品そのものの欠陥(PL事故)」への備えに特化した保険(PL保険)を手厚くすることが最優先事項となります。
FBM(出品者出荷)の場合
FBMでは、PL事故のリスクに加え、自社倉庫での保管中や、配送業者への引き渡しまでの「物流リスク」もすべて自社で負います。
そのため、PL保険に加えて、在庫の盗難・火災に備える「受託者賠償責任保険」や、配送中の事故をカバーする特約など、より広い範囲での備えが必要になります。
保険選びで失敗しないための「3つの必須条件」

ここが最も重要です。
Amazonの規約を満たすためには、「ただPL保険に入れば良い」わけではありません。
以下の条件をすべて満たした保険(または特約)を選ばないと、せっかく保険に入ってもAmazonに受理されない(COI審査に落ちる)ことになります。
条件1:補償限度額が十分か
Amazon.co.jpの規約では「1事故あたり1,000万円以上」が最低要件とされています。
しかし、重大事故のリスクや今後の規約変更を考慮し、「1億円以上」の設定にしておくことが強く推奨されます。
条件2:「追加被保険者」の設定ができるか
これが最も高いハードルです。
保険証券に、被保険者として「アマゾンジャパン合同会社 およびその関連会社」という文言を追加する必要があります。
これは、万が一Amazonが訴えられた場合に、出品者の保険でAmazonを守るための特約です。
国内大手損保の一般的なPL保険では、この「追加被保険者設定」に対応していないケースが多々あります。
契約前に必ず代理店に「Amazon出品用の保険として使いたいので、アマゾンジャパンを追加被保険者にできるか」を確認してください。
最近では、Amazonセラー向けの専用保険(EC事業者向け賠償責任保険など)が登場していますので、それらを選ぶのが確実です。
条件3:免責金額の制限
免責金額(自己負担額)を設定する場合でも、Amazonが許容する範囲内である必要があります。
あまりに高い免責額を設定していると、「実質的に補償能力がない」とみなされ、却下される可能性があります。
まとめ
保険加入は、Amazonで売上を伸ばすための「必須条件」であり、事業を守るために重要です。
「事故が起きたときの備え」としてはもちろん、「Amazonの規約を守り、アカウント停止リスクを回避する」ためにも、適切な保険への加入は避けて通れません。
特に売上が好調な方や、自社ブランド・輸入品を扱う方は、今すぐ以下の3点を確認してください。
- PL保険に加入しているか?
- 補償額は十分(規約上は1,000万円以上、推奨1億円)になっているか?
- アマゾンジャパン合同会社が「追加被保険者」になっているか?
万が一のトラブルに備えて準備をして、安心してビジネスの拡大に集中しましょう。
まずは今日、お付き合いのある保険代理店か、Amazon提携の保険会社へ相談することから始めてみませんか。
<ご注意>本記事の内容は執筆時点の情報に基づいており、Amazonの仕様や保険の要件は変更される場合があります。最新情報は必ず公式サイトやセラーセントラルをご確認ください。
