ポイント施策を打っても「一時的には売れるけれどリピートにつながらない」「楽天メッセージをどう使えば顧客と長くつながれるのかわからない」と悩んでいませんか。実は、ポイントの「ばら撒き」をやめてメッセージの「タイミング」を整えるだけで、買い続けてもらえる仕組みは劇的に作りやすくなります。
この記事では、初心者でも実践しやすいポイント施策の設計図と、楽天メッセージ・メールを使い分けた丁寧な顧客育成シナリオを、長期的な顧客価値(LTV)向上の視点で解説します。単発の売上で終わらせず、「またこのお店で買いたい」をつくる最初の一歩を踏み出しましょう。
課題の把握と現状の見える化

多くの店舗が「売上」だけを見ていますが、LTV向上のためには以下の3つを同期間で並べ、ボトルネックを見つける必要があります。
- 定着率:初回購入者がどれくらい2回目に進んでいるか
- 投資対効果:使ったポイント原資が利益を圧迫していないか
- 反応率:メールやメッセージが届き、読まれているか
STEP1:再購入率と購入間隔を把握する
まずは「誰が、いつ、何回目を買ったか」を明確にします。RMSのデータ分析機能だけでなく、受注データを活用して自店舗の「勝ちパターン」と「負けパターン」を知ることがスタートラインです。
【具体的な手順】
RMSの受注データから「注文者情報(顧客ID等)」と「注文日」を抜き出し、Excel等で顧客IDごとに並べ替えます。
※ご注意:現在、RMSから顧客のメールアドレスは抽出できません(マスキングされます)。分析は顧客IDや注文番号をキーに行ってください。
並べ替えたデータから、以下の数値を算出します。
- 初回→2回目の再購入率:初回購入から90日以内に2回目を買った人の割合
- 平均購入間隔:2回目購入までの平均日数
目安として、消耗品であれば「30日以内の再購入率20%以上」、耐久品なら「関連商品の購入率」を目標に置くと良いでしょう。
STEP2:ポイントとキャンペーンの「効き目」を可視化する
ポイントは「配布した量」ではなく「利益に残った量」で判断します。施策を行う際は、必ず以下の簡易式で原資を見積もってください。
特にお買い物マラソンなどの「買い回りイベント」時は、店舗独自ポイントに加え、ユーザーの購買意欲が高まります。SPUや楽天モバイルなどの外部要因も考慮し、「イベントがない時の通常売上」と比較してどれだけ上積みできたかを評価しましょう。
STEP3:チャネル別の現状反応を知る
「メール」「楽天メッセージ」「SNS」。それぞれの媒体には得意・不得意があります。すべて同じ内容を送るのではなく、役割に応じて使い分けができているか確認してください。
| チャネル | 主な役割 | 評価指標 |
|---|---|---|
| 楽天メッセージ (R-Message) |
「瞬発力」 スマホ通知で気づかれやすい。 クーポンやセール開始の通知に最適。 |
クリック率 ↓ 購入率 |
| メール (R-Mail) |
「説得力」 長い文章や画像をしっかり見せる。 商品ストーリーやカタログ的提案に。 |
開封率 ↓ クリック率 |
| SNS (Instagram等) |
「共感力」 使用シーンやユーザーの声。 ファン作りと認知拡大に。 |
エンゲージメント リーチ数 |
特に楽天メッセージは、販促色が強すぎたり頻度が高すぎたりするとブロック(受信拒否)されやすいため注意が必要です。
成果が出ない原因の分析

なぜ施策が空振りするのか。その原因の多くは「楽天特有のルール」と「顧客視点の欠如」にあります。
落とし穴1:ポイントの価値が伝わっていない
「ポイント5倍」とバナーを出しても、お客様にはその価値が正しく伝わっていないことがあります。
「いつ付与され、いつまで使えるのか」「何ポイントもらえるのか(具体額)」が不明確だと、購入の後押しになりません。
落とし穴2:RMSデータの限界を理解していない
RMSでは詳細な「顧客属性(詳細な年齢・性別)」や「メールアドレス」が取得できないため、外部のCRMツールのような個別の追客メールは送れません。「カゴ落ちしたAさんにすぐメールする」といった施策は標準機能では不可能です。
楽天の仕様(自動配信メールやお知らせ機能)を正しく理解し、その枠組みの中で最大限の工夫をする必要があります。
【実践編】楽天ポイントを使った具体施策

目的別に「誰に」「どう返すか」を設計します。無闇に配るのではなく、次につながる投資を行いましょう。
目的別の付与パターン
A. 新規顧客を捕まえる(顧客獲得)
初回購入のハードルを下げる施策です。
例:「ポイント10倍」などの変倍施策や、初回限定の「次回使えるサンキュークーポン」の同梱。
B. リピートを促す(継続率向上)
忘れられないための施策です。
例:「特典付きレビュー勧誘機能」を活用し、レビュー投稿者に次回クーポンを配布。または、商品到着から30日後など、消耗タイミングに合わせたポイントアップ期間の設定。
C. 客単価を上げる(アップセル)
送料負担を減らし利益率を高める施策です。
例:「2点以上購入で〇〇円OFF」「特定の商品セット購入でポイントアップ」。
採算ラインの考え方
施策を行う際は、以下の基準でGO/STOPを判断します。
- 短期判断:施策期間の「粗利額」が、通常期間より増えているか?
- 中期判断:その施策で獲得した顧客の「90日以内の再購入率」が悪化していないか?
安売りで集めた顧客はリピートしにくい傾向があります。ポイント施策の場合も、利益を削りすぎていないか必ずチェックしてください。
メール・メッセージ・SNSの連携シナリオ

「点」ではなく「線」でコミュニケーションを設計します。
各チャネルの強みを活かし、お客様の熱量が冷めないうちに次の手を打つ「育成シナリオ」の例を紹介します。
【鉄板シナリオ】初回購入から定着まで
Phase 1:購入直後〜発送(安心感の提供)
担当:自動配信メール
まずはRMS標準の「注文確認メール」「発送通知メール」で確実に安心を届けます。ここは店舗の個性を出しすぎず、正確さを優先します。
Phase 2:商品到着〜1週間(満足度の確認)
担当:同梱物・フォローメール
商品と一緒に「レビューのお願いチラシ」や「次回クーポン」を同梱します。到着後数日経ったら、特典付きレビュー勧誘メールを送り、お客様の声を集めつつ次回のきっかけを作ります。
Phase 3:1ヶ月後〜買い替え時期(再来訪のきっかけ)
担当:楽天メッセージ・メルマガ・SNS
消耗品なら「そろそろ無くなりませんか?」という案内を。耐久品なら「メンテナンス方法」や「季節のおすすめ」をメルマガで配信。
セールのタイミングでは、楽天メッセージ(R-Message)で「お気に入り登録商品がポイントアップ中」などの通知を飛ばし、スマホへのプッシュで気づかせます。
カゴ落ち・検討中ユーザーへのアプローチ
個別のメッセージは送れませんが、「お気に入り登録」を促すことでシステムからの自動通知を活用できます。
- 商品ページに「お気に入り登録でポイントダウン通知が届きます」とバナーを設置する。
- お気に入り登録者限定のポイント変倍やクーポンを発行する。
これにより、店舗が手動で送らなくても、楽天のシステムが自動で「値下げ通知」「ポイントアップ通知」をユーザーに届けてくれます。
小工数で回せるテスト設計と実行

いきなり大掛かりな改善は不要です。小さく試して「勝ちパターン」を見つけましょう。
テストを行う際は、「1回につき変更箇所は1つだけ」という原則を守ってください。あれもこれも変えると、何が良かったのか(悪かったのか)分からなくなります。
すぐにできるテストの例
- 件名テスト:メルマガの件名を「【重要】」とするか「【特典】」とするかで開封率を比較。
- 時間帯テスト:楽天メッセージを「通勤時間の朝8時」に送るか、「リラックスタイムの夜21時」に送るか。
- 画像テスト:商品単体の画像か、人が使っているモデル画像か。
最低でも100件程度の配信数、できれば1,000件程度の母数で検証し、10%以上の差が出れば「有意な差」と判断して良いでしょう。
まとめ
LTV向上の第一歩は、現状を正しく知ることです。
- 再購入率・購入間隔をチェックし、
- ポイント施策の利益率を計算し、
- メッセージの反応率を確認する。
まずはこの3点をRMSや受注データから洗い出してみてください。そして、メールアドレスが使えない等の「楽天の仕様」を正しく理解した上で、楽天メッセージやお気に入り登録機能を活用したシナリオを組みましょう。
工数をかけずに「1つだけ変えるテスト」を繰り返せば、確実に「また買いたい」と思われるお店へと進化します。まずは次のスーパーセールやお買い物マラソンに向けて、小さな仮説検証から始めてみましょう!
<ご注意>
本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。楽天の仕様(RMS、R-Message等)やガイドライン、SPUの条件は頻繁に変更されます。施策実施前には、必ずRMS内のヘルプや公式ガイドラインで最新ルールをご確認ください。
