楽天のイベントを最大限に活かしたいけれど、「どのタイミングで、何倍のポイントを付ければいいのか正解がわからない」「とりあえず全品5倍に設定しているけれど、コストばかりかかって効果が見えない」といった悩みを抱えていませんか。
この記事では、初心者でも無理なく取り組めるRMSでの基本設定手順から、競合店が密かに実践している「5と0のつく日」の攻略法、そして利益を削りすぎないための予算設計の計算式まで、実務に即して徹底解説します。次のセールからは「なんとなく」のポイント付与を卒業し、狙って売上を作る「攻め」の体制を整えましょう。
1. 戦略編:ポイント施策の「種類」と「使い分け」

具体的な設定作業に入る前に、楽天市場には大きく分けて2つのポイント施策が存在することを正しく理解しておく必要があります。ここを混同したまま運用すると、目的と手段がちぐはぐになり、効果が出にくくなります。
① 店舗別ポイント変倍(今回のメイン)
これは、店舗が自らの負担でポイント倍率(2倍〜20倍)を設定する機能です。今回の記事でメインとして扱うのはこちらの施策です。この施策の最大のメリットは、コストコントロールがしやすい点と、検索結果画面への影響力です。
店舗別ポイントを設定すると、検索結果の商品一覧において、価格の下に「ポイント○倍」と赤字で目立つように表示されます。お客様は無意識のうちにポイント倍率が高い商品を目で追う傾向があるため、検索結果でのクリック率が向上します。特にお買い物マラソンや楽天スーパーSALEといった大型イベント中において、他店がポイントアップしている中で自店だけが「1倍」のままだと、比較検討の土俵にすら上がれない可能性があります。
② 楽天スーパーDEAL
もう一つは、楽天会員限定の高還元サービス「楽天スーパーDEAL」です。こちらは10%〜50%という非常に高い還元率が特徴です。
スーパーDEALのメリットは、通常の検索結果とは別に、専用の検索枠やランキングページがあり、露出が圧倒的に増えることです。型落ち品の在庫処分を一気に行いたい場合や、ランキング上位を狙って主力商品の販売実績を作りたい場合(ブースト施策)に非常に有効です。ただし、還元率が高いぶん店舗のコスト負担も大きくなるため、日常的に使うというよりは、ここぞという時の起爆剤として使うのが一般的です。
2. 準備編:利益を守る「予算設計」と「勝負日」

ポイント施策で最も怖いのは、「売上は上がったけれど、利益が残らなかった」という事態です。これを防ぐためには、RMSを開く前に必ず電卓を叩き、自店の「限界ライン」を把握しておく必要があります。
利益シミュレーションの計算式
ポイントは「広告費」ではなく「値引き」として原価計算に組み込むのが正解です。以下の計算式を使って、商品ごとに何倍までなら耐えられるかを算出してください。
限界ポイント倍率 = 粗利益率 − 確保したい利益率 − モール手数料
具体的な数字で見てみましょう。例えば、粗利益率が40%の商品を販売しているとします。最低でも手元に10%の利益は残したいと考え、楽天のシステム利用料や決済手数料を約10%と仮定します。
この場合、「40%(粗利) − 10%(確保利益) − 10%(手数料) = 20%」となります。つまり、この商品に関しては「ポイント20倍」が赤字にならない限界ラインだということがわかります。この数字を把握していれば、「勝負所では10倍にしよう」「通常時は2倍に留めておこう」といった戦略的な判断が可能になります。
「山」を作るタイミング(5と0のつく日)
イベント期間中、ずっと同じ倍率を設定するのは予算の無駄遣いです。楽天ユーザーの購買行動には明確な波があります。その波に合わせてポイントを投下し、売上の「山」を作ることが重要です。
特に意識すべきなのが「5と0のつく日」です。楽天カード保有者にとってポイント還元率が上がるこの日は、アクセス数と転換率が普段とは比べ物にならないほど跳ね上がります。多くのユーザーは、欲しい商品を買い物かごに入れておき、5か0のつく日になるのを待って決済します。
このタイミングで、競合店がポイント5倍、自店が1倍だった場合、カートに入れていたお客様は競合店へ流れてしまいます。「5と0のつく日だけは、ベースの倍率に+2倍〜5倍を上乗せする」のが、楽天で勝つための鉄則です。また、イベント開始直後の「スタートダッシュ(開始2時間)」と、終了直前の「ラストスパート(残り5時間)」も、購買意欲が高まる重要なタイミングです。
3. 実践編:RMSでの設定手順と注意点

戦略が決まったら、実際にRMS(店舗運営システム)で設定を行います。操作自体は難しくありませんが、いくつかの落とし穴があります。メニューは「店舗設定」>「ポイント設定」から進みます。
STEP1:キャンペーンの新規登録
まずはキャンペーンの基本情報を作成します。ここで入力する「キャンペーン名」はお客様には公開されません。後で効果測定をする際に分かりやすいよう、「241204_SS_全品10倍_5のつく日」のように、日付・イベント名・内容を入れた管理名を付けることを強くおすすめします。
次に「対象期間」を設定します。ここで最も注意すべきなのが「検索反映のタイムラグ」です。RMSでポイント設定を行っても、検索結果画面に「ポイント○倍」というアイコンが表示されるまでには、数十分から数時間のタイムラグが発生します。
例えば、20時スタートのイベントに合わせて、ぴったり20時からポイント変倍を開始するように設定すると、検索結果に反映されるのが22時頃になってしまう可能性があります。これではスタートダッシュの波に乗り遅れてしまいます。プロの運用者は、イベント開始の数時間前、あるいは前日にはキャンペーンが開始されるように設定し、イベント開始時刻には確実に表示が整っている状態を作ります。
STEP2:対象商品の選択
対象商品は「全商品」にするか「商品指定(個別指定)」にするかを選べます。
基本的には「全商品」がおすすめです。お客様が店舗内を回遊した際、どの商品を見てもポイントアップしている状態は購買意欲を高めます。ただし、前述の利益計算でどうしても赤字になってしまう商品(利益率が極端に低い商品や、予約商品など)がある場合は、「商品指定」を選び、CSV一括登録やコントロールカラムを使って対象商品のみを登録しましょう。
審査提出前の「指差し確認」リスト
設定が完了したら申請ボタンを押しますが、その前に以下の3点だけは必ず再確認してください。設定ミスによる損失は店舗負担となり、取り返しがつかないこともあります。
- 倍率は合っていますか?
(「10倍」にするつもりが、デフォルトの「1倍」のままになっていないか。逆に桁を間違えていないか) - 期間は合っていますか?
(終了日時が短すぎて、イベントの美味しい時期を逃していないか) - 二重設定になっていませんか?
(別のポイントキャンペーンと期間が重複している場合、基本的には「お客様にとって有利な(倍率が高い)方」が適用されますが、管理が複雑になるため推奨されません)
4. 運用・バナー編:お客様への「見せ方」

RMSでの設定が終わっても、まだ半分です。どれだけお得なポイント設定をしていても、お客様がそれに気づかなければ意味がありません。視覚的なアピール(バナー設置)を行って初めて、施策は完成します。
スマホでの「変倍バナー」設置
現在、楽天市場の流通の7〜8割はスマートフォン経由です。PCページを作り込むよりも、スマホの商品ページやトップページにバナーを設置する方が、売上へのインパクトは遥かに大きいです。
具体的には、「本日はポイント5倍!」「期間限定!店内全品ポイント10倍」といった分かりやすいバナーを作成し、スマホ用共通説明文や、RMSのスマートフォントップページ編集機能を使って、ファーストビュー(画面を開いて最初に見える範囲)に設置しましょう。また、5と0のつく日は楽天主催のエントリーページへのリンクバナーも設置しておくと、お客様の取りこぼしを防げます。
問い合わせ対応のテンプレート化
ポイント施策を行うと必ず増えるのが、「ポイントはいつ付くのですか?」というお客様からの問い合わせです。特に、店舗独自のポイントアップと、楽天主催の買い回りポイントは付与時期が異なるため、お客様は混乱しがちです。以下のようなテンプレートを用意し、CSチームで共有しておくと、対応時間を大幅に削減できます。
件名:ポイント付与時期について
お問い合わせありがとうございます。
今回の店舗独自ポイント(当店負担の○倍分)につきましては、通常ポイントとして「注文日の翌日」に仮付与され、20日後に利用可能となります。
一方で、お買い物マラソン等の「買い回り特典ポイント(楽天主催分)」につきましては、楽天市場の規定により「翌月15日頃」の期間限定ポイントとしての付与となります。
詳細は楽天市場のキャンペーンページをご確認くださいませ。
5. 検証編:やりっぱなしにしない振り返り

イベントが終了したら、必ずRMSの「データ分析」機能を使って答え合わせをしましょう。確認すべき指標はシンプルです。
まず「店舗別ポイント変倍利用額」を確認し、実際に店舗が負担したコストを把握します。次に「転換率(CVR)」を見ます。ポイントアップを行った期間、通常時と比べてCVRは上昇したでしょうか。目安として、通常比1.2倍〜1.5倍程度に上がっていれば、施策は機能しています。
最後に、コストと売上増分を比較し、最終的な利益が増えているかをチェックします。もし「売上は上がったけれど、ポイント負担が重すぎて利益が減った」という場合は、次回は対象商品を「全品」ではなく「利益率の高いセット商品」に絞る、あるいは倍率を少し下げるなどの調整が必要です。このPDCAを回すことで、自店にとっての「勝ちパターン」が見えてきます。
まとめ
楽天ポイント運用は、感覚で行うものではなく、数字に基づいた戦略です。最後に、成功のための4つの鉄則をおさらいしましょう。
- 予算管理:粗利から逆算して、赤字にならない「限界倍率」を事前に決める。
- タイミング:全期間一律ではなく、「5と0のつく日」や「開始・終了直前」に山を作る。
- 設定のコツ:検索反映のタイムラグを考慮し、イベント前日までに設定を済ませる。
- 告知徹底:スマホバナーで視覚的にアピールし、お客様に気づかせる。
いきなり全期間で高倍率をかける必要はありません。まずは次回の「5のつく日」の数時間だけでも構いません。主力商品のポイントを+2倍にして、アクセス数と転換率がどう変化するかをテストしてみてください。小さなテストと検証の積み重ねが、盤石な店舗運営を作ります。次のイベントから、ぜひ実践してみてください。
<ご注意>本記事は執筆時点の情報に基づいています。楽天の仕様・ガイドラインは変更される場合があります。必ずRMSの最新情報をご確認ください。
