楽天店舗を運営していて「頻繁に欠品してしまう」「在庫が余って資金が回らない」と困っていませんか。在庫は売上機会を左右するだけでなく、日々の発注や在庫管理の負担にも直結します。
この記事では、誰でも取り組める在庫分析の基本から、欠品と過剰在庫を同時に減らすテクニックをわかりやすく解説します。データの見方や優先順位の付け方、発注のコツなど、次のセールに向けてすぐに使えるヒントを一緒に確認していきましょう。
現状把握とデータ準備

最初の一歩は「数字で状況を見える化」することです。感覚で判断すると、欠品は連鎖し、過剰在庫は膨らみます。まずはSKU単位で事実を整え、どこに壁があるのかを紐解きましょう。特に、売れ行きと在庫の厚みがズレていないかを最優先で点検します。
課題別のチェックリスト
欠品は「引き当て不足」「反映遅れ」「再入荷の案内不足」から起きやすく、過剰在庫は「需要読み違い」「露出不足」「返品偏り」が要因になりがちです。次の要点を短時間で確認できる形に整えましょう。
- 欠品の要点:受注に対する引き当て不足件数、商品ページの在庫表示の正確性、再入荷予定と通知導線の整備状況
- 過剰の要点:直近販売に対する在庫日数が長いSKU、広告や露出の偏り、返品・キャンセルの中身
- 回転の要点:よく売れるのに薄い/売れないのに厚いSKUの有無、反映ミスや出荷遅延
この3点を押さえると、「どのSKUから手を打つか」が明確になり、次の打ち手がスムーズに決まります。
取得レポートとデータ整備
分析は必ずSKUを共通キーに行います。集めるデータは以下の4系統です。
- 受注(注文日・色/サイズ・数量・単価)
- 出荷(出荷日・キャンセル区分)
- 在庫(日別在庫・引当済み・入荷予定)
- 商品台帳(管理コード・仕入先・原価・再入荷可否)
日次の動き+週次の見直しが基本で、在庫表示や案内文は常にRMSの公式ヘルプで最新を確認します。
KPIの定義と分析

見るべきは「回る速さ」「欠けた割合」「どれが効いているか」。同じ計算軸で追い、比較できる形に整えます。
在庫回転と在庫日数
在庫回転は以下の式で算出します。
在庫回転 = 期間の売上数量 ÷ 平均在庫数量
例えば月1,000個売り、期首800・期末600なら平均700で、回転は約1.43回/月。
在庫日数 = 平均在庫 ÷ 1日あたり販売数
平均700・日販33個なら約21日分です。
回転が高いのに欠品が多いSKUは発注と表示の見直し、日数が長いSKUは価格・露出・説明の改善か在庫圧縮が必要です。
欠品率と売上貢献(ABC分析)
欠品率は「欠品が発生した受注 ÷ 総受注」で出します。加えて、欠品による機会損失額、在庫ゼロの日数、再入荷通知の反応も並べると、課題が立体的に見えます。
また、「SKUの売上 ÷ 全体の売上」で売上貢献率を出し、累計でA・B・Cに区分します。
- Aランク(上位7〜8割):欠品ゼロと十分な在庫厚みが最優先。
- Bランク(次の1.5〜2割):維持。
- Cランク(残り):在庫を絞る。
改善アクションと発注管理

優先SKUの絞り方と対策
やることはシンプルです。ABC分析で優先順位を固定し、Aに集中、Bは維持、Cは絞ります。
短期の改善は、Aランクに対して「欠品ゼロを目指し安全在庫を厚め」「代替色・サイズへの誘導を強化」「在庫に余裕があるSKUへ広告や特集を寄せる」「再入荷予定と通知の導線をわかりやすくする」の順で進めると効果的です。
発注点と安全在庫のルール化
判断を人に依存させないために、安全在庫と発注点を数値で決めます。
安全在庫 = 日販平均 × 入荷日数 × 安全係数(1.5〜2)
発注点 = 日販平均 × 入荷日数 + 安全在庫
変動が大きいSKUは、直近実績から入荷待ち期間のブレを見て、係数を少し高めに設定すると安心です。発注点は商品台帳に入れて、「下回ったら即発注」という運用に落とし込みます。
運用面のコツは、Aは小まめな補充で欠品リスク最小化、Bは通常ロットで安定補充、Cは在庫最小で露出控えめ。Cの滞留は値下げやセット販売で機動的に圧縮します。
連携・モニタリングと運用フロー

倉庫・仕入先との連携
仕入先ごとにリードタイム(発注から入荷まで)を数字で持ち、ズレは共有して更新します。倉庫とは入荷予定・在庫差異・返品戻しを毎日確認し、引き当てや表示変更のタイミングを合わせることが重要です。
運用モニタリングと月次フロー
特別なシステムがなくてもExcel等で回せます。見える化は、カテゴリ別の在庫回転推移、在庫日数の長短、欠品率と影響額、売上上位SKUの在庫推移をグラフ化します。アラートは「Aの欠品」「Cの長期滞留」「入荷遅れ」に絞ると見落としが減ります。
【月次の優先順位】
- Aランクの欠品ゼロ化
- Cランクの在庫圧縮
- リードタイム短縮と標準化
この順で固定すると、現場がぶれません。
まとめ
在庫は「感覚」ではなく「数字」で整えると、一気に回り出します。
まずはSKU単位でデータをそろえ、回転・欠品・貢献という同じ物差しで見続ける。次にA・B・Cの優先をはっきりさせ、Aは厚め、Cは薄めというシンプルな発注と露出に切り替える。
最後に、商品ページの在庫表示や再入荷案内をていねいに更新し、倉庫や仕入先と「同じ時計」で動く体制を固めます。今日からできる小さな改善を積み上げ、欠品を減らし、在庫の重さを軽くしていきましょう。
<注意>本記事の内容は執筆時点の情報に基づいています。楽天RMSの表示ルール・API仕様・配送制度は随時更新される場合があります。最新情報は、必ず公式ヘルプや店舗管理画面のお知らせをご確認ください。また、在庫連携ツールをご利用の場合は、同期間隔や引当ルールを必ず確認し、本記事の前提と差異がないかご確認ください。
