電話対応で「どう話せばいいかわからない」「クレームが来ると動揺してしまう」と感じていませんか。電話は顔が見えない分、声の印象や受け答えでお店の信頼が大きく左右されます。
この記事では、楽天店舗ならではのよくある問い合わせやクレームを想定し、初心者でも実践しやすいやさしい伝え方、落ち着いて対応するコツ、トラブル後のフォローまでをわかりやすく解説します。今日から使える丁寧な電話の振る舞いを身につけて、お客様に安心していただけるお店作りを目指しましょう。
目的を定める

まずは準備段階で現状を正確に把握し、対応の目的を明確にしてください。状況を整理することで、対応のブレを減らせます。主要な課題は後述の方法で具体化しましょう。
現状の課題を洗い出す
まずは実態の把握から始めましょう。過去の問い合わせ履歴やレビュー欄の声を確認し、よくある不満や行き違いを具体的に整理します。お客様の声をそのまま記録することが真の要求把握につながります。
課題の把握方法
過去の問い合わせ内容を「商品」「配送」「決済」などのカテゴリ別に集計し、発生頻度を分析します。また、お客様の言葉をそのままメモに残して真の要求を探ったり、解決までに時間がかかったケースの原因を掘り下げたりすることも有効です。
楽天店舗の実務においては、下記のような分類で整理すると効率的です。
| 問い合わせ種別 | 発生頻度 | よくある内容 | 解決に必要な情報 |
|---|---|---|---|
| 注文変更・キャンセル | 高 | 数量変更、配送先変更 | 注文番号、変更締切時間 |
| 配送状況・遅延 | 高 | 到着予定、配達状況 | 注文番号、発送日、追跡番号 |
| 返品・交換・初期不良 | 中 | 商品破損、不具合 | 注文番号、症状詳細、画像 |
| 決済関連 | 中 | 支払い反映、ポイント適用 | 注文番号、決済方法、金額 |
また、楽天公式ヘルプやRMSの最新情報の確認は必須です。参照した際は「参照先・確認内容・担当者名・確認日時」を社内の指定場所に記録し、常に公式情報に従って顧客対応を行うことが重要です。
マニュアルで達成したい指標を明確にする
電話対応の目標は「伝わりやすさ」と「安心感」です。目標指標を具体化して定期的に確認しましょう。指標は改善の基準になります。
目標とする指標例
具体的な数値目標としては、「一次解決率(1回の通話で解決できた割合)80%以上」「折返し約束の遵守率100%」「クレーム再発率の前月比10%減」などが挙げられます。これらの指標は定期的に測定し、マニュアル改善に活用してください。
関係者と役割を決める
電話対応の品質を維持するには、関係者の役割を明確にすることが重要です。役割分担を明確にすることで判断の遅れや齟齬を防げます。
| 役割 | 主な責任 | 権限範囲 |
|---|---|---|
| 店長・管理者 | 最終判断、マニュアル承認 | 返金・特別対応の決裁 |
| カスタマー担当 | 一次対応、記録管理 | 標準的な対応の実行 |
| 物流担当 | 在庫・発送状況確認 | 発送遅延の対応検討 |
| システム担当 | 決済・サイト不具合対応 | 技術的問題の切り分け |
クレームや暴言などのカスタマーハラスメントに対しては、法務・労務と定めた具体的基準に基づいて対応を判断します。基準に該当する場合は応対を中断し上長へ報告、必要に応じて警察通報や法務エスカレーションを行う手順を明確にしてください。
マニュアル設計とクレーム対応の標準化

マニュアルは誰でも参照でき、すぐに実行できる構成で作成します。要点がまとまっていることが重要です。
マニュアルの目次案と主要シナリオの整理
効果的なマニュアルには、すぐに参照できる構成と具体的なシナリオが必要です。改定フローと最終責任者の明示を忘れないでください。
マニュアル構成の例
マニュアルは、「共通ルール(言葉遣い等)」「基本フロー」「状況別の対応シナリオ」「クレーム対応手順」を主軸とし、「通話記録の方法」「エスカレーションルール」「法務確認事項」などで構成します。
個別シナリオは楽天の規約や仕様に合わせて作成します。構成要素としては、状況説明、確認すべき情報、提案できる解決策、具体的な伝え方の例文、そして注意点・禁止事項を網羅すると良いでしょう。
共通ルールと電話の基本フロー
対応品質を均一化するため、基本的な流れと言葉遣いを統一します。最初の一言で印象が決まります。
電話対応の基本ステップ
1. 受付・挨拶
「お電話ありがとうございます。楽天市場○○店でございます」と明るく、はっきりと名乗ります。
2. 情報収集
「恐れ入りますが、お客様のお名前をお伺いできますでしょうか」「注文番号をお聞かせいただけますか」と情報を引き出します。
3. 要件の確認
「○○についてのお問い合わせでよろしいでしょうか」と要点を簡潔に復唱して認識を合わせます。
4. 解決策の提案
「こちらの件につきましては、○○の対応が可能です」と、できないことより「できること」を先に伝えます。
5. 合意の確認・終了
「○○の対応でよろしいでしょうか」と確認し、具体的な次のステップを伝えて、「お電話ありがとうございました」と感謝で締めくくります。
初動対応の流れと解決策提示の原則
特にクレームや難しい問い合わせでは、初動が重要です。落ち着いた受け答えでお客様の感情を鎮めましょう。初動での対応がその後の信頼回復を左右します。
初動対応の鉄則
まずはお客様の感情を受け止め、「ご不便をおかけし、申し訳ございません」と謝罪しつつ感謝の言葉も忘れないようにします。次に、正確な状況把握のために事実確認を丁寧に行い、解決策は「1つ目は○○、2つ目は△△」と複数提示して選択肢を提供しましょう。最後に「本日○○を確認し、明日までにご連絡します」といった次のアクションを明確に伝え、曖昧な約束は避けることが鉄則です。
実務運用と品質管理の仕組み

運用面では記録と権限管理が要です。誰が何をいつ対応したかが追える体制を作りましょう。
通話記録の必須項目と管理方法
適切な記録は継続的な対応の質を保つ基盤です。通話記録は次回対応の肝になります。
通話記録に必須の項目
必ず記録すべき項目は、対応日時・担当者名、お客様情報(注文番号・氏名・連絡先)、問い合わせ内容の要点、対応結果、次のアクション(担当・期限・方法)、そしてエスカレーションの有無です。
通話録音・通話ログは個人情報保護方針に基づき必要最小限で保存します。保存期間・アクセス権限・削除手順は法務と合意した社内ルールに従ってください。研修目的で録音を利用する場合は従業員への周知と同意を得ることが必要です。
品質チェックの運用とフィードバックサイクル
対応品質を維持・向上させるには、継続的な確認と改善が欠かせません。改善は小さなサイクルで回すことが重要です。
品質チェックと改善サイクル
基本マナー(挨拶・敬語・トーン)、情報収集の的確さ、解決策の適切さなどを軸に評価します。日々の自己振り返りから始め、週次のペアレビュー、月次の全体傾向分析を行い、改善点をマニュアル更新につなげていきましょう。
よくあるミスの例と回避策
電話対応でよく起こるミスを認識し、事前に対策を講じましょう。事前のチェックリストや手順を徹底するとミスが減ります。
| よくあるミス | 回避策 | NG例 | OK例 |
|---|---|---|---|
| 注文番号確認の漏れ | 最初に必ず確認する手順を徹底 | 「どのような商品でしょうか」 | 「恐れ入りますが、まず注文番号をお伺いできますか」 |
| 専門用語の多用 | お客様目線の言葉に置き換える | 「SKUの在庫切れです」 | 「こちらの商品サイズは現在ご用意がございません」 |
| 待たせたまま無言 | 確認前に断りを入れ、戻ったら謝罪 | (無言で確認) | 「確認のため少々お待ちいただけますか…お待たせしました」 |
| 約束の曖昧さ | 日時・方法・担当を明確に伝える | 「後ほど連絡します」 | 「明日の15時までにメールでご連絡いたします」 |
外部窓口(配送会社・決済事業者・楽天窓口等)の情報は社内DBで一元管理し、担当者が定期的に確認する運用を行ってください。固定の外部電話番号や受付時間はマニュアル本文に直接掲載せず、「社内DB参照」と記載することで情報の陳腐化を防ぎます。
研修と定着化で対応を現場に根付かせる

研修と実務での定着が不可欠です。繰り返しの実践で対応力を高めましょう。
研修構成とロールプレイの進め方
効果的な研修は理論と実践のバランスが大切です。ロールプレイで本番感を作り、フィードバックを短く具体的に行います。録音を使う場合は事前の同意が必須です。
研修プログラムとロールプレイ
研修は座学だけでなく、実際の問い合わせ事例をベースにしたシナリオでのロールプレイを重視します。お客様役と担当者役を交代で経験し、フィードバックは良かった点を先に伝え、改善点は1〜2つに絞るのがポイントです。
OJTと新人フォローの運用ルール
実務を通じた学びを効果的に進めるためのOJT体制を整えましょう。良い先輩の見本が最も学習効果を高めます。対応後の短いフィードバックが成長を促します。
OJTと新人サポート:
OJTは「見学→サポート付き対応→逆サポート→独立対応」と段階を踏んで進めます。新人には1枚にまとめた簡易マニュアルを用意し、困ったときのヘルプサインや、上長へのエスカレーション基準を明確にしておくと安心です。
継続的教育とマニュアル更新の仕組み
環境変化に対応し、常に最適な対応ができるよう、マニュアルを進化させましょう。法務チェックを必ず行い、責任の所在を明確に。
マニュアル更新のポイント
楽天の仕様変更、自社ポリシーの変更、新たな問い合わせパターンの増加時、法令変更時などが更新のタイミングです。現場からの提案収集、公式情報の確認、法務チェックを経て改定し、変更履歴を記録した上で全スタッフへ周知しましょう。
まとめ
電話対応は準備と場数でぐっと安定します。まず現状を把握して目的を決め、よくある問い合わせを想定したシナリオと共通ルールをマニュアルにまとめましょう。初動の一言や解決案の伝え方を揃え、通話記録と品質チェックで改善サイクルを回すことが肝心です。
お客様へのフォローや記録を忘れず、チームで学び合えば対応力は確実に上がります。まずは今日一つ実践してみましょう。
<ご注意>本記事の内容は、執筆時点の情報に基づいています。楽天市場の仕様・ガイドライン・ルール等は予告なく変更される場合があります。最新の情報は、必ず公式サイトやRMS等をご確認ください。
